「将来は世界で活躍できる子に」「グローバルな環境で学ばせたい」と考える駐在員のご家庭にとって、パリのインターナショナルスクール(以下、インター)は非常に魅力的な選択肢です。しかし、その一方で「学費が想像以上に高い…」「英語漬けでフランス語や日本語が疎かにならないか心配」といった現実的な悩みもつきものです。
この記事では、パリのインターを検討する際に誰もが直面する「学費」「言語」「カリキュラム」という3つの大きなテーマに焦点を当て、後悔しない学校選びのための具体的な情報とチェックポイントを徹底解説します。
パリのインター、学費のリアルと内訳
まず最も気になるのが費用面です。パリのインターの学費は、学校や年齢によって大きく異なりますが、一般的に高額です。
**年間授業料の目安(2025-2026年度)**
- 幼稚部 (3-5歳): 約20,000€ 〜 25,000€
- 小学部 (6-10歳): 約23,000€ 〜 30,000€
- 中学・高等部 (11-18歳): 約27,000€ 〜 38,000€
重要:授業料以外にも様々な費用がかかります。 [10]
- 出願料 (Application Fee): 約1,000€〜1,500€。出願時に支払う返金不可の費用です。 [3, 5]
- 入学金 (Entry/Registration Fee): 約10,000€前後。初年度のみ支払う一時金で、「施設開発費(Development Fund)」などの名目の場合もあります。 [3, 10]
- その他: スクールバス代、給食費、EAL(英語補習)費用、課外活動費、制服代などが別途必要になる場合があります。 [3, 5]
初年度は、年間授業料に加えて入学金などの一時金がかかるため、総額で40,000€を超えることも珍しくありません。 [17] 会社の補助制度の上限額と、自己負担額がいくらになるのかを事前にしっかり確認しておくことが不可欠です。
カリキュラムの違いを理解する:IB、アメリカ式、イギリス式
インターと一括りに言っても、その教育内容は様々です。主に以下の3つのカリキュラムに大別されます。
1. 国際バカロレア (IB)
世界中の大学への入学資格として認められている国際的な教育プログラムです。探究型学習や主体的な学びを重視するのが特徴です。 [4]
- メリット: 世界中のIB認定校への転校がスムーズ。大学進学の選択肢が広がる。
- デメリット: 課題が多く、学習負荷が高い傾向がある。
- 代表的な学校: International School of Paris (ISP) [4], École Jeannine Manuel (EABJM) [21]
2. アメリカ式 (American Curriculum)
アメリカの教育システムに基づいたカリキュラムで、AP(Advanced Placement)という大学レベルの授業を高校で履修できる制度があります。
- メリット: アメリカの大学への進学に有利。自由で創造性を重んじる校風が多い。
- デメリット: 他の国の教育システムへの移行が難しい場合がある。
- 代表的な学校: American School of Paris (ASP) [17]
3. イギリス式 (British Curriculum)
イギリスの教育システムに準拠し、IGCSE (国際中等教育修了資格)やAレベル(大学入学資格)の取得を目指します。
- メリット: イギリスや英連邦諸国の大学への進学に強い。伝統と規律を重んじる傾向。
- デメリット: カリキュラムの専門性が高く、早い段階での進路選択が求められる。
- 代表的な学校: The British School of Paris (BSP) [8]
言語の問題:「英語だけ」で本当に大丈夫?
「インターに通えば英語は完璧になる」という期待がある一方、「フランス語が全く話せないままになるのでは?」という不安は当然です。
チェックポイント
- フランス語教育のレベル: 全くの初心者向けから、ネイティブレベルまで、どの程度のフランス語教育を提供しているか確認しましょう。多くの学校が週数時間のフランス語の授業を必修としていますが、そのレベルや頻度は様々です。
- 英語補習 (EAL) の有無: お子様の英語力に不安がある場合、EAL (English as an Additional Language) プログラムが充実しているかは重要なポイントです。 [15] 別途費用がかかる場合が多いので注意が必要です。 [5]
- バイリンガル教育の実態: 「バイリンガルスクール」を謳っていても、英語とフランス語の比率は学校によって大きく異なります。「英語50%:フランス語50%」の完全なバイリンガル教育を行う学校もあれば、英語がメインでフランス語はあくまで外国語として学ぶ学校もあります。 [18]
- 日本語セクションの可能性: パリの一部のインターには、日本語の授業を受けられる「日本語セクション」が設置されています。 [18, 26] 日本語力の維持・向上を重視する家庭にとっては有力な選択肢となりますが、設置校は限られ、入学の競争率も高い傾向にあります。
「英語ができれば良い」と割り切るのか、トリリンガルを目指すのか、家庭の教育方針を明確にすることが、学校選びのミスマッチを防ぐ鍵となります。
後悔しないための学校選び3つのステップ
膨大な情報の中から、ご家庭に最適な一校を見つけるための具体的なステップをご紹介します。
STEP 1: 家庭の優先順位を明確にする
まず、ご家庭にとって何が最も重要かをリストアップしましょう。
- 予算: 会社の補助を含め、学費に年間いくらまでかけられるか?
- 言語: 英語、フランス語、日本語の優先順位は?
- 進路: 将来、どの国(日本、アメリカ、イギリス、その他)の大学に進学させたいか?
- 立地: 通学時間や居住エリアをどう考えるか?
- 校風: 自由な校風か、規律を重んじる校風か?
STEP 2: 候補となる学校をリストアップし、情報収集する
STEP 1で明確にした優先順位に基づき、候補となる学校を3〜5校に絞り込みます。各学校のウェブサイトを隅々まで読み込み、以下の情報を比較検討しましょう。
- 最新の学費とその他費用の詳細 [11, 12]
- カリキュラムと取得可能な資格
- 入学条件(英語力、試験の有無など)
- フランス語教育とEALサポートの詳細
- 卒業生の進学実績
STEP 3: 学校見学や説明会に参加する
ウェブサイトだけでは分からない「学校のリアルな雰囲気」を知るために、学校見学(オープンデー)やオンライン説明会には必ず参加しましょう。
見学・面談時の質問リスト例
- 「フランス語が全く話せない状態で入学した場合、どのようなサポートがありますか?」
- 「クラスの日本人生徒の割合はどのくらいですか?」
- 「卒業生の主な進学先はどの国が多いですか?」
- 「保護者が参加するイベントやPTA活動の頻度はどのくらいですか?」
- 「宿題の量や、家庭での学習サポートはどの程度必要ですか?」
在校生の保護者のブログや口コミサイトも、学校生活のリアルな実情を知る上で貴重な情報源となります。
まとめ
パリのインターナショナルスクールは、お子様に質の高い英語教育と国際的な環境を提供する素晴らしい選択肢です。しかし、その高額な費用と、フランス語・日本語教育とのバランスという課題も無視できません。
「有名な学校だから」「評判が良いから」という理由だけで決めるのではなく、ご家庭の教育方針、予算、そして何よりお子様の性格や将来の夢に合っているかどうかを多角的に検討することが、後悔しない学校選びの最も重要なポイントです。
この記事を参考に、ご家族にとって最高の学校を見つけてください。
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