フランスでの生活も数年が経ち、少しずつ見えてくる「帰国」の二文字。子どもがフランスの環境に慣れ、言語も上達してきた喜びと同時に、日本の学校への復帰、そして「受験」に対する不安が頭をよぎるご家庭も多いのではないでしょうか。
「日本の勉強についていけるだろうか?」
「フランスでの経験は、受験で有利になるの?」
その答えは、「帰国子女枠(帰国生入試)」にあります。この制度を正しく理解し、戦略的に準備を進めることで、フランスでのユニークな経験を最大の武器に変えることができるのです。
この記事では、帰国子女枠受験を成功に導くための、駐在中にこそ取り組むべき具体的な戦略と対策を徹底解説します。
「帰国子女枠」とは?一般入試との違いとメリット
帰国子女枠とは、海外での滞在経験がある生徒を対象とした特別な選抜方法です。一般入試とは異なる基準で選考が行われます。
帰国子女枠の主なメリット
- 競争率の緩和: 応募資格が限定されるため、一般入試に比べて競争率が低くなる傾向があります。
- 語学力の評価: フランス語や英語といった、海外で培った高い語学力が大きな評価対象となります。
- 国際経験の重視: 異文化への適応力や多様な価値観に触れた経験など、学力だけでは測れない「人間力」が評価されます。
試験内容は学校によって様々ですが、一般的に「国語・数学・英語」の3教科+面接、あるいは「小論文+面接」といった形式が多く、一般入試のように5教科全てが求められないケースが多いのが特徴です。
まずは確認!帰国子女枠の「出願資格」
「うちの子は対象になるの?」まず最初に確認すべきは、志望校が定める出願資格です。一般的には、以下の2つの条件が定められています。
- 海外在住期間: 「海外の学校に継続して1年以上(または2年以上)在籍」など。
- 帰国後の期間: 「帰国後1年以内(または2年以内)に出願」など。
これらの条件は学校によって細かく異なります。駐在期間や帰国のタイミングによっては、そもそも出願資格が得られない場合もありますので、中学・高校受験を少しでも視野に入れているなら、小学高学年や中学生のうちから志望校候補の募集要項を必ず確認しておきましょう。
駐在中にやるべき!受験を勝ち抜く3つの戦略
帰国してから慌てないために。フランスにいる今だからこそ、計画的に進められる準備があります。
戦略1:語学力を「資格」として証明する
面接で「フランス語が話せます」と言うだけでは不十分。客観的な指標である「資格」を取得しておくことが、他の受験生と差をつける上で極めて重要です。
目標とすべき語学資格
- フランス語: DELF/DALF はフランス国民教育省が認定する公式資格です。年齢に応じて、小学生なら DELF Prim (A1.1〜A2)、中高生なら DELF Junior (A1〜B2) の取得を目指しましょう。特にB1以上は、フランス語で自分の意見を述べられるレベルとして高く評価されます。
- 英語: インターナショナルスクールに通っている場合や、英語も得意な場合は、英検®︎(準1級以上)やTOEFL iBT®︎、IELTS™などのスコアも大きなアピール材料になります。
戦略2:日本の学習内容のキャッチアップ
特に現地校に通っている場合、日本のカリキュラムとの間に学習の「抜け」が生じやすいのが算数・数学と国語(特に漢字)です。
学習の遅れを防ぐ方法
- 通信教育の活用: 「Z会」や「進研ゼミ」など、海外受講が可能な通信教育は、日本の学年に合わせた学習を進める上で最も効果的なツールの一つです。
- オンライン家庭教師: 苦手な科目に絞って、日本人講師からオンラインで個別指導を受けるのも良いでしょう。
- 日本の教科書・問題集: 一時帰国の際に、学年に合った教科書や問題集を購入し、家庭学習を進めることも大切です。
戦略3:「自分だけの物語」を準備する(面接・小論文対策)
面接や小論文で問われるのは、決まって「海外経験から何を学び、それを今後どう活かしたいか」です。この問いに、自分の言葉で深く答えられるよう準備しておく必要があります。
「自分だけの物語」を作るヒント
- 異文化理解: フランスの文化や習慣に触れて、日本と比べて驚いたこと、面白いと思ったことは何ですか?
- 困難の克服: 言葉の壁や友人関係で苦労した経験はありますか?それをどうやって乗り越えましたか?
- 視野の拡大: フランスでの生活を通じて、ニュースの見方や将来の夢に何か変化はありましたか?
- 具体的なエピソード: 学校のイベント、旅行、地域での交流など、具体的な場面を思い出し、その時何を感じ、何を考えたかを書き出してみましょう。
日頃から親子でこうした対話を重ね、考えを深めておくことが、説得力のある面接や小論文に繋がります。
まとめ:フランスでの経験は、唯一無二の武器になる
帰国子女枠受験は、単に「楽な道」ではありません。海外での生活という、他の誰にも真似できない貴重な経験を、学力や人間力として証明する「チャンス」です。
- 語学力を資格で示す
- 日本の学習の遅れを最小限に食い止める
- フランスでの経験を自分の言葉で語れるようにする
駐在中にこれらの準備を計画的に進めることが、合格への鍵となります。フランスでの日々は、すべてが未来への投資です。自信を持って、お子様ならではの強みを活かした受験戦略を立てていきましょう。
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