「競合が多くて差別化の余地が見当たらない」――そんなときに頼れるのが 競争地図(Strategic Group Map) です。
縦軸・横軸を決めて業界プレイヤーを散布図に並べるだけで、価格競争を避けるブルーオーシャン が浮かび上がります。本記事では
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フレームワークの概要
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軸の選び方とNG例
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BtoC コーヒーチェーン業界の詳細ケーススタディ
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失敗しない 4 ステップ
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30 分ワークフロー
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実例から学ぶ応用ヒント
の順で深掘りし、最後に “次回活用チェックリスト” を添えました。読後 1 時間で、自社用マップまで完成させましょう。
1. 競争地図とは?
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定義:業界企業を「顧客が比較する軸 × 企業が操作できる軸」の 2 次元でマッピングし、集積(レッド)と空白(ブルー) を可視化する手法。
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メリット
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戦略の重複や過密領域を一目で把握
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ブルーオーシャン候補を迅速に発見
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5 フォース分析で得た「競争圧力」の根拠を図式化できる
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いつ使う?
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新規事業のポジショニング
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リブランディング/ライン拡張の検討
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M&A・アライアンス先の絞り込み
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2. 「良い軸」と「悪い軸」
良い軸(OK) | なぜ? | 悪い軸(NG) | 問題点 |
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価格帯(高↔低) | 顧客が最も比較する | 社員数 | 競争力と直接関係しない |
サービス深度(基本↔プレミアム) | 価値提案を示す | ロゴ色 | 意思決定に影響しない |
オンライン比率(EC%) | チャネル差別化に直結 | 創業年 | 古い = 強い とは限らない |
Tip: 1 つは 定量データ(価格・比率など)、もう 1 つは 付加価値系 にすると議論が深まりやすい。
3. ケーススタディ:コーヒーチェーン市場
3.1 軸設定
縦軸:平均客単価(円)
横軸:店舗体験スコア(1=必要最低限〜5=没入型体験)
3.2 マッピング結果(例)
ポジション 実在・想定ブランド 示唆
右上(高単価×高体験) サードウェーブ系ロースター コーヒー通・SNS 映え需要を独占
左上(低単価×高体験) 地方大型カフェ 長時間滞在・学習需要を拾う
右下(高単価×低体験) 高級ホテルラウンジ 観光客・特別利用で成立
左下(低単価×低体験) 空白 ドライブスルー専用 × アプリ決済で参入余地
Insight:低価格×低体験でも 時間短縮価値 を加えればブルーオーシャンになり得る。
4. 失敗しない 4 ステップ
業界スコープを定義 ― 補完財・代替財を含める範囲を明確に
軸案を 6 つ出す ― 顧客視点(価格・利便性)と企業視点(コスト構造・技術力)をミックス
投票で 2 軸に絞る ― 影響度 × 操作可能性 × 測定容易性の三軸で評価
空白/密集を議論 ― 密集領域=差別化深化、空白領域=参入可否をシミュレーション
5. 30 分ワークフロー
時間 行動 成果物
10 分 軸候補ブレスト 6〜8 個の軸リスト
5 分 投票 + 2 軸決定 評価マトリクス
10 分 プレイヤー配置 マッピング図
5 分 空白分析 + 施策決定 アクションメモ 3 点
6. 応用ヒント
バブルサイズを市場シェアにする と「規模は大きいが競争薄い」領域が見える。
2 年ごとに 同じ軸で更新 し、移動ベクトルを描くと競合の戦略意図が読める。
5 フォース分析結果 をマップ色分け(圧力強=赤)すると「圧力が低い空白」が明確に。
7. よくある落とし穴
軸を毎回変更 → 過去比較が不能。最低 1 年は固定。
主観スコアだけ → 片方は必ず定量指標に。
空白=必ずチャンス → 代替財や規制で成立しない場合も。必ず調査を。
8. 次回活用チェックリスト
軸候補を 6 つ以上出したか
「顧客が比較する軸」と「企業が操作できる軸」を両立させたか
空白領域の参入障壁・市場規模を検証したか
密集領域の差別化策を立案したか
次回は 「競争地図×5 フォース統合で導くポジション戦略」 を解説します。お楽しみに!
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